1. イントロダクション
理学療法士の専門資格について
私は国家資格を持つ理学療法士として、病院、クリニックで勤務してきました。理学療法士(PT)は、医学的な知識に基づいて痛みの原因を分析し、運動療法や生活指導を通じて改善を目指す専門職です。特に腰痛や肩こりといった慢性的な痛みに対する評価とアプローチは、私たちの得意分野の一つです。
目的
今回は「腰痛に悩む方へ、理学療法士が伝える正しい知識と対処法」をテーマに、できるだけわかりやすく・実践的に情報をお届けしていきます。
- 「病院に行くほどではないけれど、腰の痛みが気になる…」
- 「ネットで調べても情報がバラバラで、何が正しいのかわからない…」
- 「ストレッチや筋トレをしても、逆に悪化したことがある…」
そんなお悩みをお持ちの方にこそ、正しい知識とセルフケアのポイントを知っていただきたいと思っています。
腰痛に悩む人の統計データと一般的な誤解
厚生労働省の調査によると、日本人の約4人に1人が腰痛を経験しているは」と言われていますが、実際に腰痛は「最も多い自覚症状」の上位に常にランクインしています。しかしその一方で、腰痛に関する情報は様々であり「腰痛=骨に異常がある」「安静にするしかない」「神経によるものだからどうしようもないといった誤解が多いのも現実です。
実際には、**腰痛の約85%は画像検査でも原因がはっきりしない“非特異的腰痛”**であり、姿勢や生活習慣、筋肉の使い方などが大きく関わっていることが分かっています。
今回、そうした「腰痛の正体」を専門家の視点で解き明かし、あなたの腰痛改善のヒントとなる情報をお届けしていきます。
1. 腰痛の種類と原因とは?本当にヘルニアが原因?
腰痛と聞くと、「ヘルニア」や「坐骨神経痛」をイメージされる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、**腰痛の約85%が“非特異的腰痛”**と呼ばれ、MRIやレントゲンでは原因が特定できないものが多いです。
腰痛は大きく次の2つに分けられます。
- 特異的腰痛:椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、骨折、感染など明確な病変がある腰痛(全体の約15%)
- 非特異的腰痛:原因が画像で明らかにならない腰痛(約85%)
多くの方が悩んでいるのはこの「非特異的腰痛」です。姿勢のクセ、筋肉のアンバランス、ストレス、運動不足などが重なって起こることが多く、日常生活の見直しが重要になります。
2. 整形外科で「異常なし」と言われた腰痛の正体
「病院で検査を受けたけれど、異常なし。でも痛い…」という経験はありませんか?
これは珍しいことではなく、前述の通り多くの腰痛は構造的な異常がないためです。
実は、画像検査で「ヘルニア」と診断された方でも、全く症状が出ない人がたくさんいます。つまり「画像と症状は必ずしも一致しない」ということ。
理学療法士は、画像では見えない“動きのクセ”や“筋肉の使い方”を評価することで、腰痛の本当の原因にアプローチします。
3. 安静はNG?動いた方が良い腰痛とダメな腰痛
「腰が痛いから安静にしておこう」…これは一見正しそうに思えますが、実は安静にしすぎると腰痛が長引くことがあるのです。
動いたほうが良い腰痛の例:
- 軽度の非特異的腰痛
- 慢性腰痛で身体が硬くなっているケース
- デスクワークで同じ姿勢が続いたことによる腰のだるさ
逆に、動かすとしびれが強くなる、発熱・排尿障害がある場合などは、即受診が必要な危険サインです。
大切なのは、「動いた方が良い腰痛か?休んだ方が良い腰痛か?」を見極めること。その判断のヒントを今後の記事でも紹介していきます。
4. 姿勢と腰痛の関係|あなたの座り方・立ち方は大丈夫?
日常生活の姿勢は、腰に大きな負担をかけます。特に多いのは以下のような姿勢です:
- 椅子に浅く腰かけて背中を丸める
- 立っているときに片足に体重をかけている
- パソコン作業中、首だけ前に突き出ている
こうした「無意識のクセ」が、腰周囲の筋肉を疲労させ、痛みの原因になります。
改善の第一歩は、「自分の姿勢のクセを知ること」。スマホで動画を撮ってみたり、鏡の前で確認してみるのもおすすめです。
5. 自宅でできる!理学療法士おすすめの腰痛セルフケア3選
ここでは、理学療法士としておすすめする腰痛セルフケアを3つご紹介します。
① 腰を支える体幹トレーニング(ドローイン)
仰向けで膝を立て、お腹を軽くへこませて呼吸する。深呼吸を行う様なイメージで腰に優しい体幹強化法。
② お尻のストレッチ(梨状筋ストレッチ)
座ったまま、片足を反対の膝に乗せて前に体を倒す。腰〜お尻の緊張をほぐす、伸ばすストレッチ。
③ 背骨の動きを柔らかくするキャット&カウ
四つ這いになり、背中を丸めたり反らせたりを繰り返す。
※無理な動作はせず、気持ちいい範囲で行うのが大切です。
6. 慢性腰痛とストレスの意外な関係性とは?
慢性腰痛は、身体だけでなく「心」も深く関係しています。
- 仕事のストレス
- 睡眠不足
- 家庭での不安やプレッシャー
こうした心理的ストレスが脳に影響を与え、「痛みを感じやすくする状態(痛覚過敏)」を作ってしまうのです。
これを「脳で感じる腰痛(脳機能性腰痛)」とも呼びます。痛みを治すには、「ストレスを減らすこと」「自分の体に対する安心感を持つこと」がとても重要です。
7. 病院に行くタイミングと、受診時に伝えるべきポイント
最後に、「腰痛で病院に行くべきタイミング」と、「診察時に伝えるべきこと」をまとめておきます。
受診を迷わずすべきケース:
- 動かさなくても痛みが強い
- 足のしびれや力が入りにくい
- 排尿・排便に異常がある
- 発熱や体重減少がある
受診時に伝えると良い情報:
- いつから痛むか
- どの動きで痛むか
- 痛みの強さ・場所・時間帯
- 生活で困っていること(仕事・家事・育児など)
医師や理学療法士に正確な情報を伝えることで、より的確な診断とリハビリにつながります。
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